No.3
7名の仲間が逮捕された直後、にわかに活気づいたのはJR連合でした。「会社を大きく傷つけた東労組」「組合員を退職に追い込む東労組にまだ未練がありますか、私たちの組合へ来ませんか」と、一斉にJR総連攻撃のトーンを強めるキャンペーンを開始しました。JR東日本の職場においては何も行動を起こさない彼らは、なんとしてもJR東労組に傷をつけたいとチャンスを狙っていたからです。 ところで、JR連合は4月18日に東京で民主化闘争総決起集会と銘打った集まりをもち、その中で、明石会長は、「民主化闘争は新たな局面を迎える」と宣言し、JR総連に対して「春闘の責務を放棄した」「労働組合の体をいまやなしていない」と非難を浴びせたと伝えられています。「おい、おい、ちょっと待てよ」と言いたくなります。
社員を自殺に追い込むJR西日本
わずかな勘違いで50秒列車を遅らせた運転士を列車からひきずりおろし、再教育を口実に連日陰湿なイジメを繰り返して自殺に追いやったのはJR西日本の尼崎電車区です。このイジメを実行した現場管理者はJR連合の組合員でした。 イジメの犠牲者はなにもJR総連組合員に限りません。すでに何人かの自殺したJR連合組合員の遺族からJR総連に相談が寄せられています。そのなかには、労災認定を受けることができた方もいます。 JR連合が、社員を死に追いやる陰湿なイジメを容認するばかりか、それに荷担してきた事実は消えません。自分たちの組合員に犠牲者が続出しても、救いの手すら差し伸べない組合から「責務を放棄した」「労働組合の体をなしていない」などと言われる筋合いはまったくありません。これらの言葉はJR連合にそっくりお返ししましょう。
職場から気に入らない社員を追放するJR東海
監視カメラで休憩中の社員を監視するなど、常識では考えられない異常な職場管理を行っているJR東海では、社員間の相互監視が強要され、「列車監視を怠った」「暴言を吐いた」などのでっち上げで社員が追及されています。槍玉にあがった社員は始末書や顛末書の提出を求められ、「二度とそのようなことはいたしません」「寛大な処置をお願いします」と書かないかぎり、もとの職にはもどれません。 挙句の果てに慣れない仕事への転職を強いられ、仲間から引き離される事態が続発しています。些細なミスを犯した社員が管理者に取り囲まれ、大声で怒鳴られたあげくに中途退職に追い込まれたケースもあります。 また、労働組合の掲示を管理者が勝手に撤去する不当労働行為が横行しています。職場の切実な問題をめぐって団体交渉を行うことさえ認めず、苦情を聞き置くだけの対応をしているのです。 ここにあげたのは、JR西日本やJR東海で起きている事がらのほんの一例にすぎません。こうした会社の横暴を許しておいて、他人に向かって「労働組合の体をなしていない」「責務を放棄した」などとよく言えたものです。
不当な会社の姿勢を擁護し、労働組合攻撃に精を出す
明石会長は前述のような聞くに堪えない誹謗・中傷の末に、浦和電車区の7名の逮捕に触れて、「威嚇的に退職まで追い込み」「将来ある青年の未来を奪った」と「正義感」を吐露し、嘆いてみせました。 明石サン、そこまでおっしゃるのなら伺います。「将来ある青年」を誘い、組合活動への反発と妨害を繰り返させたのは、JR連合(JRグリーン・ユニオン)の役員ではなかったのですか。職場の仲間に嘘をつくことを青年に命じたのもJR連合役員ではなかったのですか。そして青年の行動が組合で問題になるや、彼を冷たく見捨てたのもJR連合役員ではないのですか。 JR連合役員のこのような無責任きわまる行動がなければ、青年が職場の仲間の怒りを買い、孤立し、組合も職場も辞めるはめにはならなかったでしょう。そのことを棚に上げて逮捕された7人を誹謗中傷するのは、あまりに身勝手で無責任な振る舞いではないでしょうか。 皆で決めた行動を拒否して組合に混乱を持ち込み、嘘をついて仲間の信頼を裏切った青年に反省を求めるのは、労働組合の団結を守る当然の行動です。職場の先輩が、働く者の和を乱す後輩を厳しく指導するのは鉄道職場の良き伝統です。労働組合を破壊しようという邪悪な意図から、これらを無理やり「強要罪」に仕立て上げた公安当局のお先棒を担ぐようでは、掲げている労働組合の看板が泣くというものです。
民主化が必要なのはJR連合だ
労働組合が団結を守るために行った職場集会の討論や先輩の指導を犯罪に仕立て上げるために公安当局が用いたのが「JR総連、JR東労組に革マルが浸透している」というフィクションでした。戦前の特高警察が、少しでも国の戦争政策に批判的な人物を「アカ」「共産主義者」に仕立て、逮捕、拷問を繰り返したのと同じやり口です。労働組合としての独自の見識から政府や企業の間違った行動をJR総連が厳しく批判するのを封じるため、公安当局は彼らの伝統的な手段に訴えたのです。 警察庁や公安調査庁はJR総連の「根拠を明らかにせよ」という申し入れを頑なに拒否し、これまでなにひとつ事実を明らかにしていません。この、なんら事実にもとづかない公安筋のプロパガンダを広めるため、懸命の努力をしているのがJR連合です。いったいこのような「労働組合」を何と呼んだらいいのでしょうか。 彼らには「民主化」を言うのなら、まず本当に民主化しなければならないのはJR連合自身だと言っておきましょう。 JR連合が労働組合の主導権を握ったため、経営に対する労組のチェック機能が低下したJR西日本やJR東海では、いま深刻な事態が進行しています。何よりも危惧されているのは安全です。
救急作業現場に特急列車なんでこんなことが?
JR西日本で昨年11月6日、列車にはねられ怪我をした少年の救助にあたっていた救急隊員が、現場に時速100キロで突っ込んできた特急列車にはねられて死傷するという信じられない事故が起きました。連絡の不備が指摘されていますが、それよりも何よりも、人の命より列車の運行を優先するJR西日本の経営姿勢がこの事故の根底にあるのは明らかです。 12年前に死者42人を出した信楽高原鉄道事故でも、経営トップは裁判でJR西日本の責任が確定するまで、10年にわたって遺族への謝罪を拒否し、非を改めようとしなかったのです。この体質は容易なことでは変わらないでしょう。 「信楽事故の責任はJR西日本にはない」と昨年末まで経営陣を擁護してきたのがJR連合でした。だから、救急隊員死傷事故に直面しても経営姿勢を問うことなく「安全推進の日を設けよう」などと、のんきなことを言ってすませていられるのです。
重さ1キロの鉄塊が時速270キロで飛び出す!
JR東海でも事態の深刻さはかわりません。新幹線の車輪にブレーキディスクを取り付ける重さ1キロのボルトが折れて沿線の民家や新幹線車両を直撃する事故が、東海道新幹線でここ数年多発していました。ところが、JR東海は「安全上問題はない」と語って検査の間引きを実施しようとしたのです。JR総連傘下のJR東海労が、大変な努力を払って現場でデータを集め、それを公開して社会に危険性を訴えたため、ついに経営陣は計画の断念を余儀なくされました。この間、多数を占めるJR連合系組合はなにひとつ問題を指摘していません。
起きた事故から学ばず、同じ過ちを繰り返す
一昨年2月にJR九州で列車が追突し114人の負傷者を出す事故が起きました。原因は「無閉そく運転」という運転方式の欠陥と、それによってひき起こされた乗務員のミスと考えられています。ところが5年前、1997年にJR東海で同種の事故が起きており、JR東日本やJR北海道では問題のある「無閉そく運転」方式の改善をはかっていました。ところが、JR九州やJR西日本、そして事故のあったJR東海ではなんら改善がはかられていなかったことが明らかになりました。これらはいずれもJR連合が組合の多数を握る会社です。 問題は経営側の安全姿勢とこれをチェックすべき労働組合の活動にあるのです。ところがJR九州は自らの姿勢を問うことなく、社員への締め付け強化で乗り切ろうとしています。今年5月13日、石原社長は記者会見で「社員の緊張感、責任感が緩んでいる」と最近多発する事故原因を現場社員に押し付け、「指さし確認などの基本動作を守らないと運転業務から外す」と語っています。
「安全は経営者が考えるものであり、労働組合は口をはさむな」
JR連合が多数派をしめるJR西日本、JR東海などに共通するのは、現場労働者の意見を無視し、組合の指摘に耳を貸さない経営者の姿勢です。それはJR西日本幹部がかつて語った「安全問題は会社が考えること。労働組合が考えるものではない」という言葉に示されています。 JR連合の言う「民主化」とは、このような経営者の姿勢を受け入れ、盲従するだけの労働組合に堕落することでしかありません。次にみる職場実態調査(2003年2月JR総連調べ)に、彼らの言う「民主化」の真の姿が示されています。 職場実態調査にみる「民主化」の「成果」 |