3月25日、ITF(国際運輸労連)のデイビッド・コックロフト書記長は逮捕された7人の仲間を取戻すJR総連の努力に全面的な支援を表明するとともに、小泉首相に事件の調査を求める書簡を送りました。どういうわけか、これに慌てたのがJR連合です。さっそく、ITF書記長あてに「奴らは犯罪者だ」「救うべきではない」という手紙を出しました。
しかし、公安当局に不当に逮捕され、長期にわたって勾留されている7人の労働者を犯罪者呼ばわりし、支援に反対する手紙は、逆に彼らの本質を浮き彫りにしました。
本質その1:平気でウソをつく
明らかなウソを指摘しておきましょう。彼らは手紙にこう書きました。
「われわれはJR東労組役員の不当な行為によって職を見つけることができず、不安な思いをしている労働者がいることを見逃すことはできません」。
後で触れるように、彼らがもっぱら依拠している検察側冒頭陳述の中でさえ、退職したY君が民間企業に再就職していることが明らかにされています。それなのに彼らは「職を見つけることができず」と平気でウソをつくのです。
ウソはそれだけではありません。交運労協の議論を次のように書いています。
「JR総連が本事件を交運労協に救済を申し出た時も、これは刑法に抵触する問題であり、司法の判断を待つのが妥当であるという立場から、交運労協として取り扱わないことを決定しております」。
真相は、JR連合のみがこの問題を取り上げることに強硬に反対し、「構成組織の見解が一致しない問題は取り扱わない」という交運労協の申し合わせによって取り扱わないことになったのです。よく平気でこのようなウソがつけたものです。
本質その2:「検察の言うことはみな真実」
法廷では、検察側が提示した容疑事実は証言や証拠により立証されなければなりません。ところが彼らは次のように書いています。
「法廷では、JR東労組役員が行った犯罪行為が一つ一つ明るみに出されています(別紙1を参照のこと)」
「別紙1」というのは、なんと検察側の冒頭陳述を要約したものなのです。つまり、検察が今後法廷の中でこういう容疑を立証しますと述べただけで、まだ立証もされていないのに、JR連合は「犯罪行為が一つ一つ明るみに出された」と言うのです。
検察の主張がそのまま事実とされるなら、裁判は形骸と化し、国民の権利は蹂躙され放題となります。JR連合役員の頭の中は、人権の認められない専制国家の常識が支配しているようです。
検察官と一体の心情は次のような表現にも現れています。
「7人の容疑者は黙秘権を行使していますが、私たちは事件が早急に解明され、被害者が救済されるべきだと考えます」。
不当な取調べから被疑者の人権を守るために黙秘権は存在します(黙秘権については次のサイトが参考になります。「被疑者の黙秘権」(『鯰越セミナーWEBサイト』)。この黙秘権に敵意を抱を燃やして、検察側は「黙っているといつまでも出られないぞ」と脅し、長期の勾留で人権を侵害する違法行為を行っています。この検察に付き従い、黙秘権の行使を暗に非難しているのがJR連合なのです。
Y君は検察側による主尋問に答えて「7人を厳重に処罰してもらいたい。JR東日本からも懲戒解雇されるべきだ」と言いました。JR連合の言う「被害者の救済」の中身はこういうことなのでしょう。
JR連合の立場はどこに?
JR連合にとっては、労働組合の基本的権利が侵害されてもどうでもいいのです。労働者が公安当局のでっち上げで半年以上勾留されても、そんなことは問題ではないのです。ただ、JR総連の組合員が犯罪者とされ、JR総連に打撃が加えられることが大切なのです。
警察や検察と口をそろえて「JR総連は過激派だ、革マルだ」と言い、警察や検察の力を借りてJR総連を攻撃し、破壊して、そのあとに政府や経営者の言いなりになる労働組合を打ち立てようとしているのがJR連合です。
職場の仲間の団結など不要なばかりか障害と思っているからこそ、職場集会の発言を犯罪として取り締まり、団結権を踏みにじる弾圧に狂喜し、これへの抗議になりふりかまわぬ妨害を行うのです。こんな連中にJRの職場を委ねるわけにはいきません。
7人の逮捕は内外の法令に違反する重大な労働組合の権利侵害
労働組合法第1条は次のように書かれています。
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続きを助成することを目的とする。
放っておけば強い立場の使用者の横暴の前に、労働者は泣き寝入りを余儀なくされます。だから労働者は自主的な労働組合をつくって団結し、団体交渉を通じて労働協約を結び、使用者との関係を規制するのです。それを保障するのが「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」とした憲法第28条であり、この労働組合法です。
そして労働組合法第1条には次のような第2項があります。
刑法第35条の規程は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。
刑法35条というのは「正当行為」を定めるもので、「法令または正当な業務による行為は、罰しない」としています。つまり団結権を守るためになされた行為は「正当行為」として罰しないことが法に定められているのです。労働組合の基本的権利は、法によって守られているのです。
国内法だけではありません。ILO第87号条約には次のような第3条があります。
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労働者団体及び使用者団体は、その規約及び規則を作成し、自由にその代表者を選び、その管理及び活動について定め、並びにその計画を策定する権利を有する。
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公の機関は、この権利を制限し又はこの権利の合法的な行使を妨げるようないかなる干渉をも差し控えなければならない。
また第8条には「国内法令は、この条約に規定する保障を阻害するようなものであってはならず、また、これを阻害するように適用してはならない」とも定められています。
これら内外の法令を無視して、労働組合の団結を守る行為を犯罪に仕立て上げ、7人を逮捕したのが日本の公安当局でした。容疑事実にあげられたのは、職場集会での発言内容であり、仕事の合間の会話です。労働組合の権利に対する重大な侵害といわなければなりません。
労働組合の権利侵害と闘うのはすべての労働組合の共通課題
労働組合の権利侵害に対して、それがはるか離れた外国で起きたことであっても、抗議の声をあげるのは労働運動の常識となっています。だから、国際自由労連は毎年、詳細な労働組合の権利侵害に関する報告書を公表しているのです。
経営者や政府は労働組合の権利を制限したいと考え、しばしば侵害するものです。これに対して労働組合は、自らの権利を侵害から守る不断の努力が求められます。外国のことであろうと、他の組合への攻撃であろうと、それを自分への攻撃と考え、抗議の声を上げるのは、国際連帯の精神であるとともに自分の権利を守るためでもあるのです。
JR連合はJR総連に傷をつけ、自分たちの勢力拡大に利用しようと、重大な労働組合の権利侵害にもろ手をあげて賛成し、拍手喝采しています。そればかりか、検察側の言い分を根拠に「犯罪者だ」「支援するな」と国際組織にまで懇願する始末です。労働組合としての見識が疑われる行動といわなければなりません。
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